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Brief15 「凹凸のない顔」(2):照明は最低3灯が原則


 前ページの「写真というのは、必ずしもリアルなものではない」という話のつづきですが、そう言えるごく具体的な原因として、カメラの内蔵ストロボの問題があげられます。
 女装写真をセルフポートレートとして撮る場合、室内での撮影が多いでしょうから、たいていの場合は、カメラのストロボを使っていると思います。
 しかし、ある意味で、あれほど不自然なものはないと言えます。
 たとえば、カメラのレンズを人間の目と見立てると、内蔵ストロボを使った写真というのは、おでこのあたりに強烈な光源をつけて、その光で被写体を見ている画像ということになるわけです。まさか炭坑夫でもあるまいし、ふつう人間は、ライトつきヘルメットをかぶったような状態でものを見ているわけではないでしょう。
 日光の強い時の屋外でもないかぎり、ふつうはひとつの光源だけでものを見ることはほとんどありません。その日光の強い状態でさえ、照り返しやら、まわりのものからの反射光やら、さまざまな方向からの光がものを照らしているのです。

 内蔵ストロボの場合は、レンズ近くの強力な光源で、しかもレンズとは微妙にずれている光源で撮るわけですから、顔には、通常とはちがう妙な影ができます。まったくの真正面を向いている時はともかく、顔を上下左右どちらかに振ると顔の凹凸がはっきりしてしまいます。また、髪の毛などが顔に強い影をつくり、その部分の凹凸を際だたせることにもなります。

 そんなことを防ぎ、「顔に影をつくらない」ため、私は通常、女装写真を撮る時は、複数の光源を使います。この写真などでは、それがよくわかると思います。
 背後の壁に映っている影がいくつあるか数えてください。頭部周辺を見ても、左右に影がありますし、首のあたりにさらに影が重なっているのが見えるでしょう。脚の付近も影が複雑に重なり合っています。
 この写真の場合、カメラの内蔵ストロボも使っていますが、それ以外に光源が2つ。さらにレフ板を使って外の自然光を反射させ、向かって左方向からあてていたりします。
 そして、その光のほとんどが顔のあたりに集中するようにしているのです。顔全体を明るくして、しかも、その光線の角度を左右ばかりか上下方向にも変え、どの方向から来る光でできる影も相殺しあうよう考えて光源を設置しています。

 ‥‥と、こんなふうに書くと、写真経験が多少でもある人は「そんなにストロボを立てたら、金と手間がかかってしょうがないだろう」と思うかもしれません。
 実際、旧来のフィルム式のカメラで、これをやろうと思ったら、レフ板以外にストロボが2灯、それを立てるスタンドが2脚、さらにすべてのストロボをシンクロさせるためのコンデンサーなどが必要になります。
 でも、フィルム式カメラほど強い光源が必要でないのがデジカメの強みです。
 私が使っているのは、写す瞬間だけ光を発するストロボではなく、常時点灯したままのいわゆるレフランプという光源です。これだと、写真専門店で、1灯1000円少々で買えます。同じ位置で何枚も写真を撮っている間はずっと点けておけばいいわけですから、シンクロするための装置も必要ありません。
 さらに私は、このライトを設置するためのスタンドも使っていません。クリップ式のソケットを買ってきて、部屋の中の出っ張りや家具などにはさんで固定しているのです。これなら、スタンドがなくても、ドアやカーテンレールなどにつけて、上方から照らすようなこともできます。
 ちなみに、このソケットも1000円程度。私など、電気街のジャンクショップで仕入れましたから、1個400円でした。

 私は、いわゆるカメラマニアというわけではありませんから、露出計を使って露出を測って‥‥などという高度な真似はできませんが、こうした光源でいくつかの方向から光を集中させ、あとはカメラのオート露出に頼れば(ただし前ページで書いたように「明るさ補正」をプラス気味にしておけば)、大方の顔の影は消えてくれます。

 影をちゃんと消すためには、カメラの内蔵ストロボをふくめて最低でも3方向から光を当てる必要がありますから、ストロボ以外にこうした光源が2灯は必要になるということです。

 ところで右の写真は、じつは、写真としては失敗を犯しています。よく見ると、左下にこのレフランプがひとつ、写り込んでしまっています。
 この写真の場合は、背後に外の自然光を入れた逆光で、しかも、顔に影をつくらないようにと考えたため、こんな近くから光を当てざるを得なかったのです。(さらに、右下にはこのライトのコードが写り壁にその影が投影されています。つまり、この影ができる方向からも1灯あてているわけです。)
 外光が強いため、写真では、紗がかかったようなソフトな感じに映っていますが、じつはかなり強烈な光が下から顔をあおっていて、汗がにじみ出るほど暑い思いをしています。

 「あつい」と言えば、このレフランプを使う時は、ひとつ注意が必要です。
 点灯している間は、電球の表面がそうとうな高熱になるのです。おそらく何百度という温度ではないかと思います。
 消してしまえばすぐに冷めますが、点灯中は、まちがっても電球に直接触らないようにし、光の方向を調節するような時は、ソケット部分を持って動かしてください。
 そのことをよく知らなかった最初の頃の撮影では、私は何度も火傷をしました。
 一度など、キャミソールを着て腕を出した状態で、二の腕の内側の柔らかい部分がこのライトに触れてしまい、皮がめくれるほどの火傷を負って数日間痛い思いをしたのです。
 そればかりでなく、点灯中のこのライトに紙や布が触っていれば、発火の危険もあると思います。カーテンレールに取りつけて使う時など、カーテンが触れないように注意していないと、火事になるかもしれません。

 こうしてみると私は、どうやら命がけで女装写真を撮っているようです。
 まったく、馬鹿みたいです。


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