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Brief18 「すべすべの肌」(1):女装のためにヒゲを伸ばそう


 前に、「メークはけっして、女になる魔法ではない」と書きましたが、それをいちばん端的に感じるのが「肌のきれいさ」です。
 たとえば満員電車の中で、ハイティーンの女の子を身近に見ると、その肌は本当にすべすべで、思わず触ってしまいたくなるほどです。(もちろん、そんなことは、顔であろうと犯罪行為でしょうから、しませんが。)
 どんなにメークをがんばってみても、あんなきれいな肌に見せることは、とても無理でしょう。
 特に男の場合は、(十代までならともかく)大人になると、肌の構造そのものが、女性とは大きく変わってきます。女装した顔を見られた時、正体がばれるのは、前に書いた骨格そのものの凹凸のつきかたと、この肌の「でき」が二大要素だと思います。
 そのちがいの詳細と、ベースメークでの「女の記号」の表し方は次回に譲るとして、その前に今回は、そのちがいの最大のものである「男の記号=ヒゲ」の存在と、それへの対処法を書くことにします。

 私は、通常、毎日ヒゲを剃るようなことはしていません。伸びるのが比較的遅いということもあるのですが、外で人と会うような場合も「仲間うち」での打ち合わせなどが多く、さほど身だしなみに気を使う必要がないからです。(とはいえ、取材とか、はじめての人との打ち合わせには、さすがにちゃんと剃って出かけますが。)
 ヒゲ剃りはなんといっても面倒ですし、それに、過度のヒゲ剃りは肌を傷めることもたしかです。でも、ひんぱんにヒゲを剃らないことには、じつはもうひとつ理由があります。ある程度の長さがあった方が、深剃りがきくからです。

 現在、ヒゲ剃り用のカミソリは、二枚刃が主流です。二枚刃になっている意味というのは、よくテレビコマーシャルでそれを説明しているCGなどを見かけますから、ご存知でしょう。1枚目の刃がヒゲを引っ張り出し、2枚目がその根元から切ることで深剃りになるという理屈です。
 ただし、カミソリをよく見るとわかるのですが、この2つの刃の間隔は約1ミリあります。(たぶん、それだけないと、ヒゲが間につまってしまうからでしょう。)
 ということは、1ミリ以上ヒゲが伸びている方が、二枚刃の効果はよりあらわれるということです。ひんぱんに剃っていてヒゲが短かければ、2枚目の刃の意味はないということになります。

 ですから私は、女装する場合も、たいていその直前までヒゲを伸ばし放題に伸ばしています。もちろん、その方が、深剃りができて、ヒゲがうまく隠せるからです。

 さて、そんなふうに深剃りしたとしても、ヒゲの剃りあとというのは目立つものです。特に、メークして他の部分の肌が明るいトーンになっていると、ノーメークの時よりもかえって目立ったりするのです。
 これは、次のテーマとも関連することですが、通常のファンデーションでは、けっしてヒゲの剃りあとを隠せないからです。詳しくは次回書きますが、要するに素材の透明度の問題です。
 そこで、このヒゲの剃りあとには、コーンシーラ、あるいはカバーメークファンデーションというものを使います。(この2つは、厳密にはちがうものらしいのですが、そのちがいを私は詳しく知りません。)要するに、不透明度の高いファンデーションだと思えばいいわけです。

 ところで、その「ヒゲ剃りあと」というのは、いったいどういうものなのでしょう。
 言葉を替えれば、深剃りをした――つまり、通常は肌の下にある部分でヒゲを切断した――はずなのに、そのあとがわかるのはなぜなのでしょう?
 それはやはり、ヒゲが、体毛の中でも飛び抜けて太さのある「剛毛」だからです。深い場所で切っても、その断面が大きいので、まわりの肌が毛穴をカバーしきれず、外から見えてしまうということです。
 ちなみに、ヒゲは剃るより抜く方がいいといわれるのは、単純に根もとから取れるという意味だけではなく、次に生えてきた時も、先が細く「断面」ではないからです。(面倒くさいのと痛いのがきらいな私は、そんな手間はかけいてません。ちょっとやってみたことはあるのですが、あごあたりならともかく、唇の近くのヒゲを抜くのは、本当に飛び上がるほど痛いものです。)

 いずれにしても、ヒゲ剃りあとの正体は、毛穴の奥にあるヒゲの断面であるわけです。
 ということは、不透明度の高いコーンシーラで、その毛穴をふさいでしまえばいいということです。つまり、深剃りでできた「穴」を埋めるわけです。
 コーンシーラでヒゲを隠す時、「指先でたたき込むように」といわれるのは、こうした理由からです。

 しかし、未経験の人間には、この「たたき込む」という感覚がよくわかりません。ですから私は、最初に女装した時、これがうまくいっていません。
 左の2枚の写真はその時のものです。同じ服を着ていることからもわかるように、ほぼ同時刻に撮ったものですが、上の写真では、よく見るとヒゲのそりあとがうっすらと見えています。逆に、下の写真では、ライトが近かったこともあり、鼻の下だけがみっともなく白く浮き出しています。

 これは、両方とも、コーンシーラの使い方が下手だからです。
 じゅうぶんに毛穴の中に入っていないから、剃りあとが見えてしまう。そのくせ、肌の上にはしっかり盛られているので、不透明なコーンシーラがもともとの肌を隠した上で、(明度や角度によっては)ライトの光を必要以上に反射してしまうわけです。

 結局、この時私は、コーンシーラを「たたき込む」という使い方を、知識としては知っていても、いわば「比喩的な表現」だろうというくらいにしか受け取っていませんでした。その知識の意味を、文字通り、しっかりたたき込んではいなかったというわけです。
 その結果――マニュアルどおり指でたたくようにつけはしましたが、そのじつ――、「ヒゲを隠すのだから厚く塗ればいいのだろう」というくらいの感覚で使っていたわけです。

 けっして「比喩」などではなく、コーンシーラは、本当に毛穴にたたき込まなければいけないのです。

 そのことがわかった最近の女装では、私は、頭の中でコーンシーラが毛穴を埋めていくようすを想像しながら、指先で熱心にたたくようにしています。その上で、毛穴以外の肌についた部分は、ティッシュで軽く拭き取ってしまいます。こうすれば、そこがおかしな感じで浮くこともありません。
 これは、1年後に、上のものと同じ服で撮った写真です。もちろん、ライティングなどがうまくなっていることもあるのですが、もう、ヒゲは目立たないでしょ。

 実際には、このコーンシーラの作業は、メーキャップベースを塗ったあとにするのですが、女性にはない女装メークの基本として、先に抽出して書いておきました。
 次回は、それもふくめて、ベースメークの考え方と流れに話を進めます。


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