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Brief19 「すべすべの肌」(2):ファンデはなにを変えるのか?


 さて、メークの第一歩、ベースメークをはじめましょう。
 でも、その前に、いつもどおりごたくを並べます。
 テーマは「男の肌と女の肌では、どこがどうちがうのか?」です。

 ということで、手近なところから‥‥
 今、これを書いている机の上に、偶然、「週刊朝日」の2001年12月14日号が置いてあります。この号は「内親王様ご誕生」ということで(いつもの「週刊朝日」とちがい)、やんごとなきご夫婦おふたりが並んてお立ちになった写真が表紙になっています。
 年齢も近く、背格好も(ヒールの分を除けば)ほぼ同じである男性と女性が同様のライティングで並んでいる写真は、サンプルとしてちょうどいいので(!)、ためしに顔を見比べてみましょう。(さすがに、この表紙をスキャンして掲載する勇気は、私にもありませんが。)

 まず最初に気がつくのは、顔の色のちがいです。女性の方が数段明るい肌色をしています。
 次に目がいくのは、前回にも書いたヒゲの剃りあとです。男性の側には鼻の下とあごに明確な剃りあとがあります。
 そして、それもふくめて、男性の方が、顔のあちこちで肌の色あいや濃さがちがって見えます。肌に色むらがあるわけです。それにくらべると、女性の方が、顔全体の色のトーンがそろっています。頬もあごもおでこも、同じような色で同じような明るさに見えます。もし目鼻を除いて考えたら、女性の方が、ずっと表情の乏しいのっぺりした感じになるはずです。
 これは、顔全体のトーンがそろっている――つまり、肌がのっぺりしている――からこそ、その中にある目や鼻や唇が印象的に見えるということでもあるわけです。

 ここが、ベースメークの重要な点です。
 つまり、ベースメークの基本は、(あとでつくる目鼻立ちを際だたせるために)のっぺり顔をつくるということなのです。

 では、男性の肌の色むらは、なにが原因で起こるのでしょう。前述の写真は、それがわかるほどアップではありませんので、今度は、私自身がサンプルになります。
 ほら、アップで見るとなおさら、肌に色むらがあるのがわかるでしょう。(これは、男であるという以上に、私の年齢のせいも大きいのですが、まあ、その点はお見逃しください。)

 この色むらの原因は、いろいろ考えられますが、大きく言って――
 (1)肌の「色」の変化そのものに起因するもの
 (2)「肌理(きめ)」の細かさに起因するもの
 (3)皮脂による「てかり」に起因するもの
 ――の3つに分けられるでしょう。
 (1)は、シミ、そばかす、ホクロの類。あとは、目の下の隈(くま)も、これにあたります。こうして見ると、私もずいぶんシミなどがあります。
 (2)は、生理学的には表皮細胞の大きさと並び方がそろっているかどうかということになるのですが、最も具体的な問題としては「毛穴の大きさ」という形で現れます。写真の解像度が高くないのではっきりとはしませんが、毛穴によるデコボコがなんとなくわかるでしょう。いわゆる毛穴の部分は、それ以外の部分にくらべ(体内の血の色が反映して)赤っぽく見えますし、細かい窪みでもあるわけですから、表皮にたくさんの小さな影をつくることにもなります。それが色むらの原因になるのです。
 ちなみに、前回書いたヒゲについては、毛の色と「毛穴」に関わることですから、(1)と(2)の複合的な問題だと言えます。
 (3)の「てかり」は、いうまでもなく皮脂の分泌が女性より多いからです。写真で見ても、ライトが反射している部分が、白く光って見えます。

 では、こうした問題にどう対処して、女の記号である「すべすべの肌」に見せるか?
 それを考える前に、話をより具体的にするため、先に、ベースメークの手順を頭に入れておきましょう。

 顔をきれいに洗って(もちろんヒゲも剃って)、鏡の前に座り、準備が整ったら、通常、ファンデをつける前に、まずメーキャップベースというものを塗ります。
 これは、ファンデなど化粧品の「つき」をよくして、肌に落ち着かせるためのものだと思ってください。
 そのあとで、同じようにしてファンデーションを顔全体に伸ばします。
 この時、メーキャップベースにしてもファンデにしても、手のひらの上に出したあと、おでこと鼻筋からあごにかけてのいわゆる「Tゾーン」上の何カ所かにつけ、それをTゾーンにそって伸ばし、さらにそこから、顔全体に広げていくようにします。
 そうする理由は、メークのマニュアル本などには「その方が立体感が出るから」とか、もっともらしく書いてありますが、要するに、こうするのがいちばんつけやすく、かつ、顔全体にまんべんなく広げられるからです。

 この作業自体は、指先でやっても支障ありませんが、できたら、スポンジでやってください。指を汚してしまうと、あとで、さまざまな化粧品を使う時、色が混じって濁ってしまうことが多いからです。
 メーク用のスポンジは、入浴用や食器洗い用よりずっときめ細かくできていて、左のようにパフ型のものと、右のウレタンの切れ端のようなものがあります。どちらを使ってもかまいません。値段は、いくつも袋づめされて300円程度と安いものです。

 で、この作業の中で、上に書いた肌の「色むら」の3つの原因に対処して、「のっぺり顔」をつくっていけばいいわけです。

 まず、(1)のシミやそばかすについては、じつは、なにも男固有の問題ではありません。要するに年齢の問題です。すくなくともシミは、日光や外気、化粧品など、外からの刺激でできるものですから、女だって、ある程度の年齢になれば増えてきます。(女性の方が、日常の肌の手入れやホワイトニングに気をつけているぶん、多少出にくいということはありますが。)
 ですから、これについては、女性と同様、ファンデである程度は目立たなくできます。
 といっても、ファンデーションは万能ではありません。舞台化粧用のファンデ(いわゆるドーラン)ででもない限り、これらを完全に隠すことは無理だと思います。(もちろんドーランは――舞台ならともかく――、近くで見たり普通に写真を撮ったりすれば、極端な「厚塗り」に見えます。)
 どうしても気になるものについては、前回書いたコーンシーラで部分的に隠すこともできます。ベースを塗ったあと、ファンデを塗る前に、その部分にのせてやればいいわけです。ただ、これも、あまり盛りすぎれば(前回のヒゲ隠しと同様)不自然になりますから注意してください。
 しかし、この(1)の問題については、男だからこそ有利な点もあります。
 同じようにシミができたとしても、全体に顔の色が白い女性より、男の方が、じつは目立たないのです。ですから(これは、あとで書くこととも関連しますが、ファンデーションの選択さえまちがえなければ)、ベースメークで女性と同様の、あるいはそれ以上の効果が期待できるはずです。

 最大の問題は(2)です。
 先刻は、単純に「毛穴の大きさ」と書きましたが、正確には、それは正しくありません。
 私たちは、ひとくちに「毛穴」と言いますが、すべてが「毛の生える穴」というわけではないのです。人間の肌には、本物の毛穴以外に、小さな「穴」がいっぱい開いています。皮膚呼吸のための穴、汗腺の穴、皮脂を分泌する穴‥‥。私たちは、それらすべてを「毛穴」と総称しているわけです。
 で、男の場合(ヒゲの部分は、たしかに実際の毛穴が大きくなっているわけですが)、頬などの肌が粗く見えるのは、主には汗腺や皮脂の穴のせいです。皮脂が多いので、この穴が大きくなるわけです。
 肌自体にあるこの細かな凹凸は、どうやっても、ファンデでは隠せません(これも、ドーランのようなファンデで埋めてしまうという手はありますが、それはもう「壁塗り」化粧です)。
 しかし、アップでない写真なら、これをごまかすこともできなくはありません。その皮脂の穴の底まで、しっかりファンデが塗られていれば、赤っぽい色を隠して他の部分とトーンがそろい、遠目なら目立たなくなります。
 そうするためには、ファンデだけでなく、メーキャップベースをこの部分によく伸ばしておくことが必要です。それによって穴の中にもファンデがしっかり定着します。
 しかし、気をつけなければならないのは、ここから皮脂がさかんに分泌されることで、時間がたつとすぐに、この部分のファンデが浮いてしまいます。それを防ぐためには、次の「てかり」対策が役に立ちます。

 (3)のてかりについては、このベースメークの時点より、メーク後のアフターケアが重要です。
 その原因である皮脂をとってやればいいわけです。それにはあぶらとり紙を使います。これで、メークの上から押さえつけるようにして、皮脂を吸い取ってください。
 前に書いた浮いたメークをもう一度定着させるという意味から言っても、けっしてふき取ってはいけないことはわかりますね。実際、ファンデを肌に押さえつけるつもりでやると、うまくいきます。

 さて、これでひととおり、ファンデーションで、なにをカバーすればいいかは書きました。
 でも、まだ大事なことを書いていません。
 では、どんなファンデーションを選んだらいいのかということです。
 それを理解するには、先刻から「肌の色むらを隠す」とか「トーンを揃える」というあいまいな言い方をしてきたことの、科学的な中身を考えてみることが必要です。

 中学生の時、「美術」の試験勉強も手を抜かなかった人は、「色の三要素」として習ったことを覚えているでしょう。色を決めるのは「色相」「明度」「彩度」の3つの要素です。
 このうち、ファンデーションが整えるのは、主に彩度なのです。

 しかし、この三要素のうち、じつは、この彩度というのがいちばんつかみにくい概念だったりします。色相は「赤」「青」‥‥という色の種類そのものですし、明度は字のとおり「明るさ」です。でも、彩度というのはなんとなく「あざやかさ」だろうというくらいで、もうひとつよくわかりません。
 「白」「黒」「灰色」という無彩色は、彩度がゼロの色です。それに対して、あざやかな色ほど彩度が高いということになります。
 次のように考えると、もう少しわかりやすくなります。
 たとえば、絵の具のさまざまな色を混ぜ合わせていくと、混ぜれば混ぜるほどだんだん黒に近づいていきます。光の場合は、いろいろな色の光を混ぜていくと白に近づきます。つまり、純度の高い色ほど彩度が高く、何種類もの色が混ざれば混ざるほど、彩度は低くなっていくということです。
 で、先刻から、男の肌は色むらがあるということを言っていますが、細かい色むらは、見た目、さまざまな色が混じるということでもあるわけですから、男の肌は彩度が低いということもできるわけです。
 そしてさらに、この彩度が低くなるというのは、別の言い方をすると「色がくすむ」ということでもあります。
 つまり、ファンデーションは、そんな肌のくすみを抑え、一定の彩度に整えるための化粧品だということなのです。

 ファンデーションがカバーできるのは、主にはこの彩度の部分です。色相や明度をカバーする、あるいは変える力はあまり強くありません。
 つまり、いくらファンデーションを塗っても、地の肌の色相(ピンク色か黄色っぽいか)や明度(色白か色黒か)は、透けて見えてしまい、ごまかし切れない(地肌とちがうファンデをつけることで色が混じり、逆にくすんだ感じになる)のです。
 じつは、そこまでをふくめてカバーしようとするファンデーションが、何度か登場したドーランやコーンシーラであるわけですが、こんなふうに色相や明度まで隠してしまうと、とたんに肌はナチュラルな風合いを失います。

 ホームページなどの女装写真を見ていて、メークしているにもかかわらずくすんだ顔色だったり、いかにも白塗りという感じがしたり、あるいは、ファンデが浮いた感じがすることが多いのは、この点をよくわかってファンデを選んでいないからです。
 若い女性のピンクがかった白い肌にあこがれる気持ちは、よくわかります。
 でも、ファンデーションにそれを期待するのは、そもそも無理があるのです。
 ファンデーションは、実際の自分の肌の色合いと明るさに合ったものを選ぶのが鉄則です。

 メーカーによってもちがいますが、ファンデの色合い(色相)は、ピンク系とオークル系(黄色っぽい肌色)の2方向があり、その中間にナチュラル系などという色を設定している場合がほとんどです。その上で、その3系統に、明るさのちがい(明度)を何段階かつけるというマトリクス上に品種が構成されています。
 そして、日本人男性の場合、肌の色は(色白であろうが色黒であろうが)まずまちがいなくオークル系です。

 ファンデは、無理をせず、オークル系のさほど明るくない色を選んだ方が無難です。
 その方が、あなたは、確実に「自然な女」になれるはずです。


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