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Brief23 「可憐な唇」:コンビニコスメは買いやすいけれど…
唇は、前ページに書いた「鼻」同様、形だけ見るなら、個人差の方が大きくて、男女差はさしてないパーツです。男の方が厚くて大振りな人が多い気はしますが、男だって薄い唇の人や小さい口の人はいますし、女だって厚い人や大口の人はいます。
しかし唇は、鼻とはちがい、記号としては男女差が明確に現れるところです。
その差は、いうまでもなく「色」。そして、もうひとつは「輪郭線」です。
こういう言い方をすると気味悪く感じる人もいるかもしれませんが、唇というものを形態生理学的にいえば、「唯一、体外に出ている内蔵の一部」ということになります。皮膚ではなく粘膜が外から見える場所に露出しているのは、唇の他ありません。
で、この粘膜というのは皮膚より薄くて、また、それ自体としてはほとんど色素を持ちません。
つまり、唇から透けて見えている色というのは、その人の体の中の色そのものなのです。
男でも女でもそうですが、唇の色は年齢とともにあせたりくすんだりしてきます。若い頃はピンクやバラ色だったのが、次第に黒ずんできたり色落ちしてきたり‥‥。つまりそれは、体内に老廃物がたまってきている結果なのです。
毛細血管が太い男性の場合は血の色が濃く、それが老廃物といっしょになって赤黒くくすんできます。(ちなみに、私のような時代遅れのヘビースモーカーは、紫色っぽい黒ずみが出てきますが、これは多分、体内にタールが蓄積されているせいでしょう。)
女性の場合は毛細血管が細く、さらに年齢とともに血行が悪くなる傾向が強いので、色があせてくる感じはありますが、そのぶん、男性ほど暗くくすんだ色にはなりません。
ということで、唇は若いほど明るくあざやかな色で、男女をくらべても、女性の方が明度も彩度も高いわけです。
また、彩度が高いということは、顔の他の部分の肌との区切りがはっきりしているということでもあります。つまり、唇の輪郭が明確なほうが若さや女らしさを表すことにもなります。
そして――
たとえそんな理屈は知らなくても、不思議なことに人間は、それを記号として過剰なほどみごとに読みとります。
明るくあざやかな唇を、若さの記号として、また女の記号として見ているわけです。
もちろん「美しさ」ということになれば、価値観は多様なわけで、たとえば白や黒など「病的な美」をめざした口紅というのも「流行」や「傾向」としてはあります。しかし、おおかたの口紅は、結局、そんな若さと女らしさの記号を顔につけ加えることをめざしているわけです。
では、それを踏まえて、どんな口紅を選んで、どう塗ったらよいかを考えてみましょう。
メーカーによってもちがうのですが、口紅の色というのは、上で書いたような(あえてそれをつけるという)特殊な色を除けば、レッドを中心にして、黄味の強いオレンジ、スカーレット、コーラルといった色、青みの強いバイオレット、ピンク、ピーチといった色、そしてブラウン系の色といった系列に別れています。そうした色相の系列の上に明度と彩度に変化をつけた品種を揃えているわけです。
そしてさらに、(同じメーカーでも)化粧品のブランドによって差異をつけているのが、透明度とツヤのちがいです。つけた時、地の(実際の)唇の色がどれだけ透けて見えるか、また表面にグロウ感が出るかどうかのちがいということになります。(このツヤについては、口紅の上に重ねるリップグロウというスティックやジェルを別に出しているブランドもあります。)
こうした選択肢の中から口紅を選ぶわけですが――
ここで、色より先に考えなければいけないのは、口紅の透明度です。
先にも述べたように、唇は皮膚ではなく粘膜です。つまり毛穴がなく、もともと表面はつるつるなのです。ということは、肌につけるファンデとはちがって、実際の唇の色とはまったくちがう色を塗ってしまっても風合いそのものがさほど変化するわけではなく、不自然な感じにはならないということです。
それなら、不透明なカバー力の強いブランドを選んだ方が、男の唇の特徴である地の赤黒さやくすみを確実に隠せるということになります。
そこで問題になってくるのが、口紅をどこで買うかということです。
もちろん、どんな化粧品であれ、本格的にメークにとり組むなら、コスメ専門店で(できればアドバイスを受けて)買った方がいいに決まっています。でも、女装初心者の方にそんな勇気はないでしょう。
都合がいいことに、最近では、コンビニなどにも(値段としても手頃な)コスメブランドが並んでいます。それなら、他の買い物といっしょにカゴにしのばせてレジに持っていくようなこともできます。実際そうやって化粧品を手に入れている方も多いにちがいありません。
しかし、他の化粧品ならまだしも、すくなくとも口紅だけは、このコンビニブランドはやめた方が無難です。
コンビニコスメは、主には高校生から20代はじめの女性を購買ターゲットとして開発されています。そして、その年代の女の子は、たいてい、もともと唇がきれいなピンク色をしています。そのため、口紅もほとんどが透明度の高い商品構成なっているのです。中にはリップクリームのようなグロウに、薄く色をつけただけというものもあります。
自分は若くて女の子のようなピンク色の唇だという人ならべつですが、男性にはやはりおすすめできません。
コスメ専門店は無理でも、せめて大型スーパーの化粧品売り場などで、ある程度の年齢層以上を対象とした(不透明な)ブランドを選んでください。
では、色としてはどんなものを選んだらよいでしょう。
唇の地の色を気にする必要がないのですから、より女の記号の強いものを選んだ方がいいに決まっています。明るくあざやかな色、つまり明度と彩度の高い色ということになるでしょう。
ただ、明度について、そして色相、つまり色の系列については、ちょっと留意しなければならないことがあります。それは、まわりの肌の色、ファンデの色との関係についてです。
ファンデのところで言ったように、男の肌というのは、女と比較すると色黒でオークル(黄色系)気味です。
あまり明るい色を選びすぎると、一昔前の「ヤマンバ化粧」のようになってしまいますし、一方、黄色系が強くて明度の低い色を選びすぎると、今度はまわりの肌との輪郭がはっきりしなくなります。つまりどの系統でも明るすぎる色は避けるべきですし、また、暗めのオレンジやブラウンもあまりおすすめできません。
最終的には、あなたの肌の色や年齢、また好みや着ている服の色などを考慮して選ぶことになりますが、そのあたりを考慮した上で、オレンジ、レッド、ピンクの系統の3本を持っていれば、たいていの雰囲気は出せます。
口紅を塗るには、必ず紅筆を使ってください。
スティックで直接塗るなどというのは断じてペケです。スティックでは、先刻から強調している唇の輪郭がはっきりと描けないからです。
紅筆はシャドーブラシなどとはちがい、腰の柔らかいなめらかな毛でできた小さな平筆です。それだけに、うまく使えば、曲線にそってデコボコやかすれのないきれいな線を描くことができます。
紅筆でスティックの先をこすり取るようにして筆の毛に口紅をじゅうぶん含ませたら、まず実際の自分の唇の輪郭に沿い外縁を描きます。「輪郭線を決める」というつもりで慎重に筆を運んでください。
最初は上唇。中央の二つの山型は、初心者のうちは、自分の唇の輪郭を正確になぞった方がいいでしょう。慣れてきたら、その山のカーブや頂点をなだらかにしたりシャープにしたりすることで、表情の変化もつけられるようになるはずです。
下唇も実際の輪郭に沿って、舟型の外縁を描きます。やはり初心者のうちは、唇を薄く見せるために実際の輪郭より内側に描くというような高度な真似はしない方が無難です。
上下の唇の合わせ目、つまり左右の口角は、特にくっきり描くようにしてください。若干口を開き気味にして口の内側まで塗ってしまうつもりでやるとうまくいきます。
じつはこの部分は、唇の粘膜と皮膚の変わり目があいまいになっているところです。でもよく見ると、下唇の方が上唇より若干外側まであるはずです。それを正確になぞると、口角がきゅっと上がった魅力的な唇に見えるようになります。
上で掲載した唇の写真をもう一度並べてみました。メーク前とくらべてみれば、ここをきっちり描くことで、口角が上がって見えるのが理解できると思います。
さて、輪郭を描き終わったら、あとは、その輪郭の内側を、紅筆の腹を使い塗っていきます。当然ですが、せっかく描いた輪郭からはみ出さないようにしてください。
塗り終わったら、軽くティッシュをくわえるなどして、余分な口紅をとっておきましょう。
必要があれば、そのあと、グロウを同じように塗り重ねます。
一度でもメーク経験のある方なら、口紅を塗った唇が、いかに「女の記号」かというのを実感しているでしょう。
口紅の前に、たとえどんなに手の込んだアイメークをしていようが、その段階ではまだ、顔全体はファンデのせいでのっぺりと生彩のないものです。
ところが、口紅の「赤」が入ったとたん、いきなりそれが生き生きと華やかなもの変わるのです。
時間をかけたメークが報われる瞬間です。
そんな“ルージュマジック”の瞬間こそが、メークの、そして女装のひとつの楽しみであることはたしかです。
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