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Brief24 「前髪」:額は顔いちばんの男女の記号


 前にも書いたように、私は、ここではヘアスタイルの話はしないつもりでいました。ふだんから平均的女性以上の長髪にしていてウィッグ経験がないので、髪型に関する私の実践はあまりお役に立たないだろうと思ったからです。
 でも、顔の男女差を語る以上、「額の生え際と前髪」の関係は、やはり書かないわけにはいかないでしょう。

 日本の女性美の象徴として「富士額(ふじびたい)」という言葉があります。日本髪を結って髪を上げた時、ちょうど額の中央の生え際が富士山を逆にしたような形になっているというやつです。
 まあ、現実には、きれいな富士額の女性なんてそんなにいるわけではありませんが、それとはべつに、この額という部位は、男と女であきらかなちがいのあるところです。
 その差異は、大きく分けて次の2点です。

 1つ目は、生え際のうぶ毛の存在。
 男にしても女にしても、赤ん坊時代はおでこの生え際がはっきりしていません。頭髪から連続した形で、徐々に毛が細く、またまばらになっていって、おでこの真ん中あたりでやっと毛がなくなるという感じの生え方をしています。
 それが長じるに従って、次第に生え際がはっきりしてきます。頭髪部分はより太い毛になり、おでこの部分の毛は、より細く、そして短く(つまり早く抜け落ちるように)なっていき、最終的にはそのうぶ毛も生えなくなります。
 経過と向かう方向としては、男も女も同じ道をたどるのですが、じつはその変化のスピードに男女のちがいがあるのです。
 男の場合は、第二次性徴の頃にはうぶ毛はすっかりなくなり、すでにかなりはっきりした生え際をしています。ところが、女の場合は、このうぶ毛が長く残ります。たいていの女性が20代前半まで、ここにうぶ毛が生えています。そして、それ以降も、生え際近くの頭髪は細く、また短くて、境界のはっきりしない傾向は残ります。

 2つ目のちがいは、第二次性徴以降、おでこの左右の端で進行します。男の場合、生え際がくっきりしたばかりでなく、この部分の頭髪の後退が始まるのです。いわゆる「剃り込み」の入った状態に近づいていくわけです。20歳くらいになるともう、ここの部分の生え際の形は、男女でまったくちがうものになっています。
 その結果、額全体の形でいえば、男は長方形、女は半円形に近い形になるわけです。

 ふだん、人の額だけを意識的に見るようなことはまずありませんから、明確な知覚として判断しているわけではないのですが、それでも、相手の顔を見る時、この部分は確実に目に入っていて、無意識のうちに男女を判別する手がかりとなっています。
 つまり、「うぶ毛があって生え際がはっきりせず、全体としては半円形の額」というのが「女」を判定する強力な記号となるのです。

 というわけで、この額について、私はいろいろ試してみました。
 生え際のあたりの頭髪をすきばさみを使って2〜3pくらいの長さにすくとか、あるいはレザーカットでもすれば、その毛がうぶ毛に見えるのではないかと考え、やってみたこともあります。でも、ダメでした。
 もともと毛が細くてくせっ毛の人なら、もしかしたらこの方法がうまくいくかもしれませんが、超ストレートで毛の腰が強い私の場合、短くした毛がつんつんと立ってしまっただけで、とてもうぶ毛には見えません。
 ましてや、「剃り込み」部分の角張った感じは、そもそもそこに毛がないのだから、打つ手はありません。

 結局のところ、唯一の解決方法は「生え際を隠す」ということになります。
 ウイッグを使うより自毛の方がいくぶんましだとしても、男である以上、同じような悩みはあるわけです。

 生え際を髪の毛で隠すとなれば、その方法は、前髪の長さによって大きく変わってきます。
 私は、これも、いろいろ試してみました。

 前髪が長い場合、たとえば他の髪と同様の長さ――いわゆるワンレングスのロングヘアだったりする場合は、髪を縛ったりして後ろにまとめれば、当然、オールバック状態で生え際が見えてしまいます。とはいえ、髪をまっすぐ前に下ろせば顔が隠れてしまうわけですから、生え際を隠すには、どこかで分けてサイドに流すということになります。
 ところが、男が女に見せようという場合、この分け目にも条件がつきます。
 七三くらいの割合でサイドで分けようものなら、例の「剃り込み」部分がはっきり見えてしまって、男の記号が白日の下にさらされることになるわけです(写真左)。それを避けるためには、やはり真ん中かその近くで分けるということになるでしょう。
 しかしこの場合も、同じ理由で、髪をあまり上にかき上げることはできません。ワンレンで女らしく見せるには、結局、左右の眉毛の縁をかすめるあたりに髪の毛がくるようにするしかないわけです(写真右)。
 これは、ヘアスタイル全体にとっても、変化のつけにくい条件となります。
 女性の場合でも多少そういうことは言えるのでしょうが、特に女装の場合、ワンレングスというのは、ヘアスタイルで遊ぶようなことがしにくい髪型です。

 これに対して、前髪をカットしている場合は、そのカットした前髪を前にたらしてさえおけば、それだけで額は隠せます。
 そして、こちらの場合は、真っ直ぐたらしてもいいわけですし、サイドに流すこともできます。
 流せば多少生え際が見えますが、例の「剃り込み」部分さえカバーしておけば、前髪のおかげでそのあたりに微妙な影ができ、まるでうぶ毛が生えているようにさえ見えたりします。

 そして当然、額を気にせずサイドの髪で遊べるぶん、ヘアスタイルの自由度も高くなります。


 もちろん、ウィッグではそうもいかないスタイルもあるでしょうが、それにしても、ワンレンのウィッグよりは、前髪をカットしたデザインのウィッグの方が、おそらくさまざまな遊びができるはずです。

 ただ、このカットした前髪をおろす髪型というのは、どうしても「かわいらしい」という印象が強くなります。
 以前、視線について語ったところで、「男が女装する場合、じつはセクシーな感じよりかわいらしいさの表現の方が容易だ」というようなことを書きましたが、それは、こんなことからも言えるわけです。

 ワンレンの髪をかき上げるセクシーな仕草にあこがれるところはあるのですが、やはりそれは、強い女の記号である額の形をアピールするからこそセクシーだということで、男には無理なのかもしれません。


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