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Brief26 「豊かな胸」:ストラップレスブラに御用心


 さて、いよいよ、その時が来てしまいました。ほんとは逃げたかったのに‥‥。

 バスト、です。

 もともと、このエッセイはこんなにつづくと思っていなかったのですが、なんだか好評のようで、それに諸般の事情もあって、ついついここまで書き連ねてしまいました。
 もとより「胸のふくらみ」は、上半身で最も強い「女の記号」ではあるわけで、本来ならメークの話に入る前、体型とポーズについて語ったところで、いちばんに取り上げなければいけないテーマです。
 でも、バストについて、このエッセイの他の項目と同様に、私自身の実践を詳しく語るのはなんだか照れくさくて、できればうやむやにしてごまかしてしまおうかと思っていたのです。
 しかし、あと話すことは、もう「服」くらいしかありません。その前にやはり、この話題に触れないわけにはいかないでしょう。
 ここは、いつも通り冷静になって、「他人事」みたいに語ってしまいましょう。

 ‥‥うっ! ‥‥とか言ったはしから、この写真です。
 こんなフォルムを見るだけで、もう、冷静ではいられないところがありますよね。男って、馬鹿です。
 ‥‥うぉっほん。
 えー、これは、私が女装の時に使っているブレストフォーム。つまり、「ニセモノのおっぱい」です。本物に似させたシリコーンゴムでできていて、ブラジャーで言えば、CカップからDカップくらいの大きさがあります。私のサイトの他のところにも書きましたが、値段はけっこう高いです。

 別に、写真を撮るだけなら、普通は上に服を着るわけですから、正直言ってこんなモノは必要ありません。ブラの下に、女性が使うウレタン製パッドを入れ、(男の場合、当然それだけでは足りませんから)芯の部分に、脱脂綿か、そうでなくても古靴下でも丸めてつめておけば、見かけ上はなんら問題もないわけです。
 それなのに‥‥、私がわざわざこんなものを買ってしまったのは(まあ、そこが書きにくかったいちばんの理由なのですが)、結局、フェティッシュな性的欲求以外の何ものでもありません。要するに、触った時の柔らかな感触とか、つけた時の重さや質感が欲しかったってことで‥‥(ああ、恥ずかしい)。

 とはいえ、バストの形を作るのに、これ1コで(正確には2コか)足りるわけですから、持っていると、ラクといえばラクです。
 ブラをつけたあと、カップの中へこのフォームを入れ込むだけで、きれいなバストができあがります。

 男性の場合、ふつう、ブラのホックをはずした経験はあっても、はめた経験がほとんどないので(‥‥ふふ)、ブラをつける時の正しい手順というのを意外と知らなかったりします。先にストラップに腕を通し、そのあと、背中でホックをとめると思っている人が多いようです。
 しかし、ブラジャーを着ける時、女性の場合でも、ホックは体の前側でとめるのがふつうです。
 カップ部分を背中側にまわしブラを体に巻きつけるようにして、アンダーバストの位置でホックをとめ、そのあと、片方の腋の下あたりの部分を引っ張って、全体をぐるっと回すわけです。
 それから、2つのカップを乳房にかぶせ(この作業が女装の場合はあとになるわけですが)、最後にストラップに腕を通して、肩にかける――という順番です。
 背中でホックをとめるというのは、(特に男性の場合)至難の業ですから、やはりこの手順でやった方がまちがいないでしょう。

 ブラをつけ、中にフォームやパッドを入れたあとは、必ず、鏡でカップの位置を確認してください。中身がナマ身ではない男の場合、ずれていることが多いものです。
 片方に寄っていたり、上過ぎたり下過ぎたり、あるいは、左右の位置が食い違っていたり‥‥。
 この時、必要があれば、ストラップの金具(といっても樹脂製の場合がほとんどですが)を動かし、長さを調節します。ブラジャーは、たいてい女性向きに売られているので(そりゃそうだ)、胸囲(アンダーバスト)で合わせて買っても、胸の厚みの分、ストラップが短めに調節されている場合がほとんどです。最初の時は、少し伸ばすことになると思います。

 あとは、この上にランジェリーなりトップスなりを着ればいいわけですが、夏物の服などの場合、このストラップが見えては困るものもあります。
 特に私の場合など、肩を見せる服が妙に好きだったりするので、通常のブラ以外にストラップレスのブラも用意しなければなりません。
 ストラップレスブラには、それ専用のものと、通常のブラからストラップが取り外せるようになった2ウェイのものがあります。
 前者はたいてい、カップが下側3分の2くらいまでしかないローカットのものです。胸の切り込みが深い服を着る場合は、こちらを選ぶことになるのですが、そもそもフォームやパッドが見えてしまっては困る女装者の場合、これはないでしょう。
 後者を買っておけば、まちがいないでしょう。これなら、通常のブラとしても使えるわけですし。

 このストラップレスブラを買う時は、アンダーバストのサイズが小さめのものにしてください。きつく胸を締めつけるくらいのものを選ぶのがコツです。
 そうしないと、ずれるからです。
 ストラップレスブラは、当然上から吊ってはいないわけで、この胸のまわりを締める力で支えられています。女性の場合は、乳房そのものが「とめ」の役割を果たしますが、胸のない女装者はそうはいきません。
 いくら男の肋骨のつくりが「ずん胴」だと言っても、下の方が細いのはまちがいありません。腕を動かしていたりすると、それに連れた肌の動きで、すぐにずり下がります。  特に私のように、実際の乳房とほぼ同じ重さを持つブレストフォームを使っていると、その重みがモロにかかって、さらにその危険が大きいわけです。
 この写真など、明らかに失敗を犯しています。
 全体を遠目に見た時はまだしも、近くで見れば、奇妙な姿です。こんな位置にバストがある女性なんて、いないでしょう。

 もちろん、こんな写真をアップにするのはいやなのですが、フェティッシュな欲望に身を任せ、ただ「胸」のためだけに4万弱のお金を使ってしまったおバカな自分への見せしめとして、さらすことにしました。
(いろんな意味で‥‥恥ずかし〜いッ!)


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